No.462 特集 古気候学と“気候危機”
今年の夏は“危険”な暑さが続いた。20世紀後半に指摘され始めた地球温暖化問題は、広く社会に受け入れられるまで半世紀以上かかった。また、歴史時代には大気中の二酸化炭素(CO₂)濃度が今より高い状態が存在しなかったので、気候変動の議論は19世紀後半以降の気候観測結果をもとに行われてきた。
しかし、地球史をさかのぼって数千~数千万年前の地質記録(氷床コア、海洋堆積物など)を研究する古気候学は、温暖化に伴う未知の気候も探っている。
長らく古気候学を研究してきた多田隆治さん(東京大学名誉教授)は「すでに温暖化はかなり進行し、人為的なCO₂放出を止めただけではすぐに元には戻らない」「自然界がCO₂を放出する速度の100倍で人類がCO₂を出し続ければ、現在の気候モードを維持するメカニズムが機能する限界(しきい値)を超え、急激な気候変動(モード・ジャンプ)が起こってしまう可能性がある」と言う。多田さんに、古気候学から見た“気候危機”について聞いた。
No.453 特集 わたしの隣人、人権はどこに
さまざまな国から生きのびるため日本に逃れ、私たちの隣で暮らす外国の人たちは今、どのように生活しているのだろうか。
政治的に不安定な母国へ帰国できないなどの事情を抱えているが、日本政府から滞在許可がおりないため、入管施設に“収容されている人”は124人(2021年末)、一時的に身柄の拘束を解かれた“仮放免者”は5910人(2021)となっている。仮放免中は就労できず、健康保険がないので病気になれば医療費は全額自己負担。生活保護も受けられない。さらに、コロナ禍の影響で支え合っていた仲間からの支援も継続困難になり、外国人支援の市民団体の活動だけが頼りになっているという。
そこで、そんな隣人を支援する大澤優真さん(北関東医療相談会/つくろい東京ファンド)と、新島彩子さん(難民支援協会)に、現場の状況について聞いた。また、国際人権法を研究する藤田早苗さん(英国・エセックス大学)に「国際人権法からみた日本の入管収容問題」について聞いた。
No.452 特集 非戦のリアル 装いサステナブル
昨年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻から始まった戦争。この時代にまさかこんな戦争が起きるのか!と衝撃を受けた人は多かったでしょう。
しかし戦争は1年を経た現在も継続し、ウクライナの市民はもとより、穀倉ウクライナからの小麦などが途絶えて貧困国を襲うなど多くの命が失われ続けています。
東ティモールやアフガニスタンなど各国で武装解除や停戦に貢献してきた伊勢﨑賢治さん(東京外国語大学大学院教授)は、「何よりも戦争は始まる前に止めることが大前提。外交なくして戦争回避はできない。今は、起こってしまった戦争を一日も早く止めること(非戦)をロシアとウクライナ両国に呼びかけたい」と言います。
そんな伊勢﨑さんに、「ロシアによるウクライナ侵攻の背景、国際人道法と戦争犯罪に当たる行為、戦争回避の参考になるノルウェーやアイスランドの事例、大国のはざまにある緩衝国家・日本の役割、戦争犯罪を裁く法をもたない日本の問題点」などを聞きました。
No.451 特集 装いサステナブル
私たちの装いは選択肢が豊かで自由になりました。安価な衣服が街にあふれ、流行にも縛られなくなったからです。反面、服の大量生産・大量廃棄は多大な温室効果ガスを排出するなど、地球環境に悪影響を与えています。
そんな中、注目を集めているのが「エコ」「エシカル」「スロー」ファッションを発展させる「サステナブル・ファッション」です。キノコや食品廃棄物などを活用する「バイオマテリアル」、コンピュータを使って型紙を制作する「コンピューテーショナル・デザイン」、衣服を脱物質化する「バーチャルファッション」など、それは衣服の素材・生産・流通を刷新し、持続可能な世界を目指しています。
「サステナブル・ファッションとは何か」について水野大二郎さん(京都工芸繊維大学教授)に、「サステナブル・ファッションのつくり方」についてデザインラボ・Synfluxのみなさんに話を聞きました。
No.451
特集 ふくしまの12年 わたしができることをする
福島第一原発の敷地内で、タンクに溜まり続ける、トリチウムなどを含んだ汚染水。
政府は今年春から夏頃に、この大量の汚染水を海洋放出する準備を着々と進めています。しかし、汚染水は今後も増え続け、薄めて海に流したとしても、放射能が消えるわけではありません。このまま海に流してしまってもいいのでしょうか。
また、今年の春以降、帰還困難区域内に設定された特定復興再生拠点区域の一部で、住民が帰還するための準備が進められています。この地域に住んでいた人々に話を聞きました。ふくしまの12年、現地からのレポートをお届けします。