のぐち英一郎の鹿児島ガイド #2 「県職員1000人の上海研修派遣事件の解説」


「監査請求のしくみ」

監査請求というのは、簡単に言うと、

行政のお金の使い方が、違法じゃないの?不当じゃないの?と思ったときに、もう一度チェックしていただけませんか?と頼むことのできる仕組み、ということになります。

『住民監査請求(じゅうみんかんさせいきゅう)とは、住民が、自らの居住する地方公共団体の違法若しくは不当な財務会計上の行為があると認められる場合、その地方公共団体の監査委員に対し監査を求め、その行為に対し必要な措置を講ずべきことを請求することができる制度である。直接請求(参政権の1つ)である事務監査請求とは異なる制度である。- Wikipedia より』



今回は、違法性というより、事業の在り方として不当なのではないか?ということで、監査を請求しました。

税金の使い方として、手続き的に落としているところがなくとも、そもそも税金をこの事業に使うことの、妥当性を問いたい。そういう観点で監査請求しました。





監査請求をされると自治体(今回は鹿児島県ですね)は、自治体として持っている、監査委員の方や、もしくは外部監査を入れて、請求内容の筋や正当性が通っているかどうかを監査します。

その監査役には、止める権限があるのですか?

監査委員の決定は、きわめて重みを持ちます

監査委員から、これは違法性があるから支出をとりやめるべきだ、あるいは妥当性を著しく欠いていて公金の支出として不当だ、というようなことを判断される、ということがあれば、それは大変な重みを持ちます。


議会の議決も、とても重みがあるわけですが、議決までなされた税金の使い道に「物言い」がつく、という大変なインパクトを出すことができます。

それは、拘束力というよりも、選挙で選ばれた議会が決めた支出について、お金のことを厳しく見る人々から、あらためての意見を言われる、ということなので。

結果は、今回の事業には、違法性も不当性もない、という判断でした。なので、請求棄却です。

こういう結果になることは想定をしていたので、
県の内部監査ではなく、個別の外部監査をしていただきたい、ということもお願いしました。

しかし、それも一緒に棄却。


ここにはおかしなことがあって、監査委員を、「外部監査にするか・内部監査にするか」を決めるのは、内部監査委員なんです。

今回は県の監査委員、4名の前で意見を言ってきました。
その4名のうち、議会でこの上海事業に賛成した県議さんが2人入っています。そういった方々が、外部監査にするかどうかも決める。

なので、よほどの市民の目の厳しい事がない限りは、わざわざ外部監査に出すようなことはありません。

なぜなら、県議の立場として自分が議決に参加したものを、今度は監査委員の立場だから、やはりあれはおかしかったよね、と考えを変えることは、まずおこりません。
おこらないような制度設計が、そもそもなされています。それでも制度はそのようになっていますし、監査請求を経なければ住民訴訟ができませんので、住民訴訟のための、ひとつのプロセス、とみることもできます。

しかし今回は、伊藤知事へのリコールを求める状況です。

なので、わざわざ時間のかかる司法・訴訟へ行くよりかは、リコールひとつに集中をしていこう、という状況になりました。


それを受けて、伊藤知事は8月23日の定例記者会見の中で、

「数字を見通せるところ(搭乗率の改善)まできた。県で予算を計上して事業を拡大する必要はないという判断をした」

と発表し、10月以降の実施を見送りました。結果的な中止です。

当初わたしたちは、9月議会にも上海研修のための追加の補正予算を伊藤知事は立てるのではないか、と考えて、ひとつのリコールの切り口になると思っていました。
そういったことも報道されてきていましたので、そこも含め、9月にはもう補正予算もつけない、ということを発表されたのだと思います。

つまりは、監査請求と署名を使い、ひとつの世論を形成したことが、目に見えるかたちになって、無駄遣いを止めることができた、とわたしは思います。

議員じゃないとできない、という話ではありません。
誰にでもできます。

ただ、たとえば、陳述の文書作成のために自治法をあたる、ですとか、節目節目で文書を作るのに、多少のデスクワークがあります。

それも言ってしまえば、実際には、おかしいことをおかしいと書いて、しかるべきところに出すだけ。
そこにおいては特に、出費の必要もありません。

リコールも、要はやろうという人たちが集まるだけです。
それでも例えば、署名簿を作るとなれば、30万人分の署名用紙を印刷するだけでも、タダではできません。

ですから、想いを持った人たちが、気持ちを寄せ合い、お金をカンパもお願いしながら、自分からも幾ばくかの手出しをしていけば、もう日本中どこでも、誰でも、同じことができます

こういった手法の「とっつきづらさ」は、文書の字面がいかめしいだけです。
あなたが、もし「おかしい!」と思ったら、直接民主主義的に、地域や社会に参入できる、ひとつの大事な手法であり、住民の道具だとわたしは思います。

そういうものを駆使した結果、上海派遣は、もう予算付けをしない方針、とのことです。


わたしは、体育館問題と上海問題は分けて考えていて、

自分たちにとっては、「無駄遣いと知事の独断専行」で、一括りにしてますけども、県としては、体育館は「やはり作る」というもともとの考えがあります。

なので、ドルフィンポートをどう使うのか、体育館をどこにどうするのか、という話は今後とも引き続き動いていくでしょう。

なぜ、上海路線?

この上海派遣問題には、県知事と仲のいい、中国でも活動する企業への利権すら疑われています。

伊藤知事は県政の長なので、そこにもし、個人へ還元される利益があると明らかになれば、それはとんでもない話です。


また、この間、鹿児島銀行が上海へ200人研修派遣など、
県の要請を受けて、民間の方々が乗る動きもひとつ出てきました。

だから県は、当面は予算付けをしない、となりましたが、こういうやり方はやはり、長続きはしないのでは、とわたしは思っています。

わたしは、単に需要と供給の関係で、たくさんの人にとって、乗る必要がないものを、無理に乗せようとして、そのためにお金を注入し続けなればならない、というのは無理があると考えます。


また、先日伊藤知事が、中国東方航空の中国本社にも行かれて、
「ぜひ航路は維持していただきたい」ということを副社長さんに頼まれたそうです。

しかし、そのときは何の確約も取れず、
むしろ「溝辺空港を使うための利用料をもっとさげてほしい」など、向こうからのリクエストだけを突きつけられたものの、他の会社との兼ね合いもあり、
伊藤知事はそこへの即答も出来ずじまいでした。

それが企業としての航空会社の現状を物語ると思いますし、
伊藤知事の手札の数を物語ると思います。

両者の現状を鑑みて、自分の中では、
この路線の維持はなかなか難しいのではないかと思っています。



野口英一郎
鹿児島市議。2000年に 28歳で初当選。以来4期当選、現在にいたる。
なかなかわかりづらい政治の話を、議員だからこそ知りうる内情も混ぜて、わかりや
すく解説します。
趣味は、水泳と読書と料理(片付けは苦手)。
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